1st short story「キミスケッチ」

（このストーリーは約1分ほどで読めます）

Episode 1.
「キミスケッチ」

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ぽっかりと時間が空いてしまった。

LINEの通知には気づいている。

でも、既読はつけたくない。

話し方を思い出したくて、日記を取り出した。

一面に広がる『親友』の文字。

かつては心地よい響きだったのに、いまは見るのもつらかった。

「絵が上手なんだね！」

桜香る季節に出会った彼女は、私の絵に憧れてくれた女の子だった。

私よりちょっぴり可愛くて、少し抜けてて、絵が下手くそな女の子。

私の大事なところを褒めてくれる、私の素敵な太陽だったのに。

彼女の上達ぶりを、私は横でずっと見ていた。

新緑が生い茂る頃には、もう、私の絵が褒められることはなくなった。

「え、描くのやめちゃったの？」

他意がない顔で驚いてみせる。

不細工に笑う私を彼女は許してくれなかった。

「そっか。私なんかより才能あると思うんだけどなぁ」

無責任に言わないで。

わざわざ私に否定させないで。

下手くそな嘘をつかせないで。

せめて悪意を持っていて。

じゃないと、嫌うことすらできないから。

「そうそう！　なんか絵師さん募集ってのがあったから応募してみたんだけどね、」

やめて。

その続きを語らないで。

私が諦めた夢を、希望を語らないで。

太陽みたいな笑顔で私の醜さを炙り出すのは、やめて。

あなたを見て、嫌な気持ちになるのがつらい。

じぶんの醜さが嫌い。

自分勝手なところが大嫌い。

汚い気持ちに共感してもらおうとしてるところが大嫌い。

こんな気持ち、わかってもらえるわけがない。

こんなことを考えるじぶんが大嫌い。

じぶんを追い詰める

あなたのことが――

やっぱり、じぶんが大嫌い。

家に帰ってスケッチブックを取り出す。

パラパラと見える、大事な思い出たち。

どれも私の大切な宝物。

きっかけの一枚を見つけて、自然と笑みが零れた。

彼女は日向。私は日陰。

叫んでも気づかれない、ただの亡霊。

誰にも見てもらえない日陰っ子。

いつのまにか、絵は紙切れになっていた。

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vocal…葉露
music…biz & 雪月
illustration…のう
story…潜
movie…真霜

《Youtube》
https://amehurashi.com/

《Subscription&DL》
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